• 新規事業実務研究会 事務局

考える連載コラム1【事業スコープって何?:前編】

事業を始めようと思い立った時、何からどうやって始めようとしますか?

事業を「船」にたとえて考えてみましょう。自分の母港にいるときには、どこへ向かって、どうやっていくかということをはじめに考えますよね。どこに行くかわからないけど、とりあえず船があるから外洋にでてしまえ!!!といって、いきなりTシャツと短パンだけで、何も積まないで風まかせで太平洋に出る人はいないと思います。なぜなら、すぐに何らかの危険にさらされ、死んでしまう可能性もあるからです。考えるまでもなく、本能的に成り立たないということがわかっているから、そういうことをしないのです。

命を守るという意味では、船の特性、海の特徴、操船に関することなどの知識を最低限勉強するし、操船のスキルを訓練し、天気の読み方、海図の読み方を習得するでしょう。必要な荷物と人員を揃え、万が一の場合をいくつも想定して、その場合に備えた準備をするはずです。それでも急な海況の変化をはじめとする予想もしなかった事態に出くわして、目的地につけなかった船は歴史的にも数多くあるでしょう。

いまでこそ、さまざまなデータからかなりの確度で海況は予測できるし、GPSで自分の位置が確認できますので、安心感は高まっていますが、それでもたとえば電子機器が使えなくなったらアウト!なわけで、そういう事態も備えて準備をしてもしすぎることはないのです。

しかし、この「船」が「事業」であるとすると、どうでしょうか?

事業における海図は、事業計画です。船を出すのにいろいろな装備や人や知識が必要となる点は、事業においても同じです。航海で起こるトラブルの種類は昔と変わらないかもしれませんが、その詳細や対応方法はおそらく昔とは大きく違います。その対応によってその後起きることが予想しにくい点も、さらに心配です。

もし事業を初めてやる人だったら、訓練されてもいないし、もちろん経験もありません。そのような中でも「とりあえず出てしまおう」といって船を漕ぎ出すのも、事業の起点としてはありかもしれません。実際振り返れば、そのようにせざるを得なかった、という人も多くいます。あるいは、社内新規事業の場合では、自分の預かり知らぬところで「仰せつかってしまった」から、とりあえずやるしかない!!という人もいるでしょう。

それでも、行き先が明確であればなんとかなることもあるかもしれません。しかしこれまで見させていただいた出航後の船、つまり開始したあとの事業について、ほんとうによくある恐ろしい事実は、行き先が明確になっていないことなのです。

「とりあえず太平洋に出て、状況みて行くところを決めよう」という感じでしょうか。これでは、運が悪ければ出航してすぐに嵐がきて沈没するか、もしラッキーでいいコンディションが続いたとしても、いずれ燃料がつき、食糧がつき、漂流してあとは死んでしまうでしょう。あるいは、見えてきた島にとりあえずついたものの、食糧もなく生き延びられなかったり、誰かが助けに来てくれたとしても、その時はもう航海できない状態になっていることが想像できます。

こうしたことにならないために、事業をやってみようと思うひとが、最初にやっておくべきことが「事業スコープの設定」です。つまり、「船でどこの海を航海してどこに到着するのかを明確にする」ということです。それは、自分がやっている事業をどのような内容と言い方で人に伝えるかということにも通じます。これは、私たちが推進しているステージゲート法を使った新規事業開発実務の、「ステージ1」の最初の項目と位置付けていて、事業展開の実務では最も重要なポイントです。

・・・以降は後編へ続きます!



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